JRRCマガジンバックナンバー

JRRCマガジン第69号(第9回JRRC著作権セミナーの結果について)

2016年11月16日掲載

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   JRRCマガジン No.69 

川瀬先生の著作権よもやま話
「JRRC著作権セミナー『今、なぜ集中管理なのか(デジタル・ネットワーク社会
         における著作物の電子化許諾について考える)』の結果について」
 
                               2016/8/16配信
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皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。

残暑お見舞い申し上げます。
お盆の時期となり、朝の通勤電車は座席に座れないものの、
身動きが取れる状態となり、若干ゆったりとした気分でオフィスへ向かう今日この頃ですが、
皆さまいかがお過ごしでしょうか?

それでは、
川瀬先生の著作権よもやま話
「JRRC著作権セミナー「今、なぜ集中管理なのか(デジタル・ネットワーク社会
における著作物の電子化許諾について考える)」の結果について」
をお送りいたします。


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川瀬先生の著作権よもやま話  
「JRRC著作権セミナー「今、なぜ集中管理なのか(デジタル・ネットワーク
社会における著作物の電子化許諾について考える)」の結果について」

 今回は、連載を一回お休みさせていただき、7月15日(金)に行われました本センター
の著作権セミナーの結果をお知らせしたいと思います。
 デジ・ネット社会の急速な発展は、著作物の利活用のあり方を大きく変革しました。19
96年に作成された世界知的所有権機関(WIPO)の新条約は、通称インターネット条約
と呼ばれています。これはネット時代における、権利者の権利を整備するためのもので
あり、わが国においても、公衆送信権や送信可能化権の創設等の整備が行われ、200
2年には条約の締結が行われたところです。
 それ以降、2年又は3年の間隔で著作権法は改正されています。改正案の立案者であ
る文化庁は、権利保護の強化と権利制限規定の整備のバランスをとりながら法改正作
業を進めていますが、権利者の許諾なしに著作物を利用できる場合(権利制限)の拡大
に関する関係者の要求は高まるばかりです。これは、技術の進歩が今までにない著作物
の利活用を可能にし、技術があるのにそれを活用できないのは、著作権が原因だと考え
る人が多くなってきたことを意味します。特にJRRCが管理している学術関係の雑誌、書
籍、論文集等の利用に関する要望は今後ますます強まってくると予想されます。
 このような事態に権利者側はどう対処するのか。著作物を利用したいときには著作権
者の了解を得るという著作権制度の原則を維持するためには、今までのように権利の上
に胡坐をかき、利用者から利用の許諾を求められるのを待っている姿勢では、もう対応
できないのではないか。必要な利用については簡易な手続で、かつ適正な使用料で許諾
する制度を整える。もちろん権利者側の手で。そうしないと結局権利者の権利はどんどん
弱められてしまうというのが私の問題意識です。
 このセミナーは、このような問題意識のもと、権利制限の導入を回避するためには、集
中管理の充実・強化による対応しかないのではないかということで企画したものです。
 セミナーは、写真家で、日本写真著作権協会常務理事、本センター副理事長の瀬尾太
一氏の基調講演で始まり、その後行われたパネルディスカッションは、瀬尾氏に、旺文社
法務グループマネージャーの洪性釿(ほんそんくん)氏、元東芝知的財産部法務部長で
企業法務に詳しい光主清範氏及び弁護士で文化庁文化審議会委員でもある松田政行氏
の3名を加えた4名のパネラーで行いました。司会は私です。
 パネルディスカッションの構成は以上のとおりですが、著作者、出版者、利用者及び学
識経験者と立場の違うパネラーの方々のご意見は非常に興味深いものがありました。
 瀬尾氏は基調講演の中で、2000年以降のデジ・ネット社会の進展を踏まえた上で、著
作権の運用は個人管理から集団管理へと変化し、著作権は存在するが容易に許諾がと
れない状況すなわち「市場の失敗」と称される状況に陥り、その結果権利制限の拡大が
行われることがないように、集中管理の充実強化の重要性を強調されました。
 洪氏は、出版者の視点で、集中管理の重要性に言及された上で、商業出版物といって
も多種多様であること、利用方法も公共的な利用から商業的利用まで多様であること等
を指摘しつつ、許諾範囲、使用料の額、その徴収の方法等については更に研究を進め
る必要があるとされました。また、権利の集中化を促進するための出版契約書の見直し
を進めていること等についても言及されました。
 光主氏は、企業等における電子化利用の必要性は拡大してきており、電子化許諾制
度の円滑な導入が望まれること、実施に当たっては関係の利用者団体との話し合い等
を通じて円滑な許諾体制の構築を図るべきこと等を提言されました。また集中管理団体
との協定があれば、そこに権利を委託していない権利者の著作物についても協定と同様
の条件で利用できるいわゆる「拡大集中管理制度」についても説明されました。
 最後に松田氏は、最近訴訟が決着した米国のグーグルブックサーチ訴訟と、国立国会
図書館における納本書籍等のアーカイブ化や公共図書館等への送信・複製を認めた著
作権法改正の内容を説明されました。この中で国の税金で納本書籍等の全文のデータ
ベース化が図られた以上、近い将来必ずその活用が求められるので、このとき権利者側
はどのように対処するのかという問題提起をされました。
 その後、司会の私からパネラーの方に発表の内容等について質問を行い、議論を重ね
ましたが、ここで得た私の印象を整理しておきたいと思います。
 まず、それぞれ立場の違うパネラーでしたが、デジ・ネット社会の進展に伴い、より集中
管理の重要性が増しているという認識は共有されていたと思います。ただ、この分野では
無断複製から被害を受けるのは著作者ではなく出版者であるという事実を反映してか、
出版者の立場としては、闇雲に許諾の範囲を拡大することや、使用料の額を低く抑える
ことには慎重であるということが分かりました。
また、著作者と出版者との文書契約の締結やその契約内容についてはかねてから課題
があると指摘されていたところですが、その改善に努力されていることは理解できました。
 ところで、私にとって最も衝撃的だったのは、松田氏の提言でした。グーグル訴訟は、
権利者の許諾なしに大学が所有している書籍等をアーカイブ化し、そこから書誌事項を
抽出するとともに、著作物のごく一部分を検索結果とともに表示(スニペット表示)する等
が米国著作権法における包括的権利制限規定であるフェアーユース(公正使用)に該当
するかどうかが争われたものです。結果は、グーグルの行為はフェアーユースに該当し
著作権侵害にはならないとされ、本年4月の上告不受理処分により、高裁の判断が確定
しました。しかし、訴訟の途中で両者が合意した和解の内容の中にあった有償で行われ
る全文提供サービスにおいて権利者が非許諾の意思表示をしないと許諾したものとみな
されるといういわゆるオプトアウト方式の条項を、裁判所はグーグルにおける知の独占を
助長するものである等の理由から認めませんでした。それにより、和解は成立せず、グ
ーグルは大量の書籍等をアーカイブ化しているにもかかわらず、それを提供するために
は、権利者の許諾が必要ということになったわけです。
 一方、わが国の場合は、米国におけるグーグルの役割を国立国会図書館が果たすこ
とになったのですが、グーグルとの決定的な違いは、アーカイブ化が税金により行われて
いることです。要するに、その先にある有償の全文提供サービスの実施は、米国よりわ
が国の方が現実的で実現可能性が高いということになります。
 松田氏の問題提起は、近い将来議論が起こるであろう国立国会図書館の全文提供サ
ービスに対し、その時に備えて集中管理の仕組みがうまく機能するように今から取り組ん
でいくしか権利者側の許諾権を守る方策はないのではないかと私には聞こえました。
 セミナーの報告は以上です。JRRCは、現在個別受託制度の普及、海外の管理団体
との協定の締結及び電子化許諾制度の導入に向けて取り組んでいますが、これらの施
策に積極的に取り組むことが、権利者の許諾権を守ることにつながるのだと痛感した次
第です。 

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