JRRCマガジンバックナンバー

JRRCマガジン第92号(電子書籍事件)

2017年07月20日掲載

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   JRRCマガジン No.92 

山本隆司弁護士の著作権談義
第52回「電子書籍事件」

                                   2017/2/27配信
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皆様、こんにちは。
JRRCメルマガ担当です。

立春が過ぎ、日の出時間も日を追うごとに早くなり、春の訪れが待ち遠しい昨今。
さて、今月から始まった「プレミアムフライデー」。
消費拡大に繋げた米国の「ブラックフライデー」を例に経済界と政府とが舵を取っての試みらしい。
一部報道では特典付きを用意する店舗など様々なイベントがあったそうです。
これからもっと浸透していくであろうとの期待を胸に、
思いを巡らす今日この頃ですが、
皆さまは週末いかが過ごされましたでしょうか?


それでは、
山本隆司弁護士の著作権談義
第52回「電子書籍事件」
をお送りいたします。


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山本隆司弁護士の著作権談義 
第52回 「電子書籍事件」
                               
 アメリカにバーンズ・アンド・ノーブルという大きな本屋さんがあります。その本屋が被告と
して訴えられた事件がありましたので、ご紹介します。
 米国には、誰でも電子出版できるSmashwordsという電子出版プラットフォームがあります。
原告が自著(原告作品)の電子ファイルをそこにアップして出版を委託しました。その受託
条件では、Smashwordsおよびその提携先がアップされた作品を全世界において出版・電
子出版できる権利と、その33%の記述を無料サンプルとして媒体を問わず頒布すること
ができる権利が規定されていました。Smashwordsの提携先であるB&Nが、原告作品をウェ
ブ上で電子書籍として販売を開始し、その5%の記述を無償サンプルとして公衆にダウン
ロード可能にしました。しかし、約2年の間に1つも売れなかったので、原告は2011年10
月に、Smashwordsに対して契約解除を通知しました。しかし、B&Nは、半年後の2012年4
月に、原告の弁護士から警告書を受け取るまで、誤って原告作品をウェブ上に掲載したま
まにしていました。
 契約終了後の当該半年間に、B&Nのウェブ上から、原告作品が販売されたことやその
無料サンプルがダウンロードされたことはありませんでした。しかし、契約終了前に、B&N
のある顧客が無料サンプルをダウンロードし、B&Nが顧客用に提供する電子ロッカーに蓄
積していました。ところが、当該顧客が、契約終了後に2回、当該電子ロッカーから当該無
料サンプルを自己の端末にダウンロードしました。
 そこで、原告は、当該B&Nの運営する電子ロッカーから当該無料サンプルが顧客にダウ
ンロードされた行為について、B&Nによる複製権・頒布権の直接侵害と、顧客による複製
権侵害に対する間接侵害とで、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所(地裁)に訴えまし
た。
 地裁は、B&Nの直接侵害について、Cartoon Network判決(536 F.3d 121 (2d Cir. 2008))
を援用して、ダウンロードの際にB&Nのメモリーに生ずる電子的蓄積は技術的なものでし
かないから複製には当たらないと、また、ダウンロードは顧客の行為であるからB&Nに頒
布はないとして、直接侵害を否定しました。また、間接侵害についても、顧客による複製は
原告の許諾の範囲内であることから複製権侵害が成立しない、したがってB&Nによる間接
侵害も成立しないと、判断しました。そのうえで、原告の訴えを棄却しました。
 原告からの控訴を受けた第2巡回区連邦控訴裁判所は、B&Nによる複製権・頒布権の
直接侵害についても、原告の許諾の範囲内であることから成立しないとして、地裁判決を
維持し、控訴を棄却しました。すなわち、受託条件で認められている顧客による利用は広
範で、顧客がSmashwordsとの契約終了後も原告作品を利用することが許されており、原
告作品がDRMの付されていない形式で利用に供されており、顧客が原告作品を第三者の
提供する電子ロッカーで利用することも許していると、認定しました。
 この判決の解決はこれで問題ないと思います。しかし、B&Nが契約終了後の半年間、原
告作品をウェブ上に掲載したままにしていた行為に、ドキッとしました。というのは、ここで
は争点とはなっていないのですが、アメリカでは、配信したことが頒布権に当たると解され
ているだけでなく、さらに配信の事実がなくても配信のためにアップしていただけでも頒布
権に当たるという解釈があるからです。その解釈によれば、B&Nには頒布権の侵害がある
ことになります。また、アメリカでは、著作権侵害(直接侵害)は無過失責任なので、侵害
者が無過失であっても損害賠償義務が発生しますし、現実損害がなくても法定損害賠償が
認められるからです。この論点についての判示もあれば、もっと面白い判決なのですが。

以上

 
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